建築レポート

2026.08.20

風土をあらわす建築 ―青森県立美術館

静岡に引っ越してきて4年余りが経ちました。

静岡出身の方と話すと「静岡は田舎」という意見を聞くことがあるのですが、

「またまたご謙遜を……」と毎回返しています。

 

私が生まれ育った青森県は、東京から離れているために日常から文化資本を得難いところでした。静岡で暮らすよりも、日帰りで体験できることが限られています。

最寄りの映画館や大きなホールは片道3時間、汽車で行けば往復5千円。

「大人がどんな経験を与えてくれるか」への依存度は、地方であればあるほど高まります。

 

小学生の時、学校の催しとして青森県立美術館に行く機会がありました。

隣接する三内丸山遺跡と半分ずつ時間を使って、美術館を見学しました。

青森県立美術館には、直感的に「洗練された、でもそれだけでない力を持つ特別な建物」と思わせる迫力がありました。

この建物は、のちに京都市京セラ美術館の設計を手掛けた青木淳氏の設計です。

ロケーションは、市街地から少し離れており三内丸山遺跡の隣。

隣といっても、敷地が広大なので美術館を目指していくと遺跡は視界には入らないのですが、

建物は縄文時代の壕をイメージして、土が掘られたような土色の壁床の地中空間に、雪が覆いかぶさるように白い壁天井が乗って、その凹凸の隙間で美術館賞をするようなつくりになっています。

青森県立美術館の設計についてのインタビューで青木氏は、

同じ展示でも、東京のホワイトキューブより青森のホワイトキューブで見たいと思わせる訴求力を持たせるために、青森の、三内丸山遺跡の隣という立地がもつアイデンティティを建築に組み込まなければならないという使命のもと設計したと語っています。

 

静岡県で、海山の自然や便利でにぎやかな街を見て、そこに住まう穏やかで朗らかな人々と接してきました。

静岡で「あなたの故郷はどんな場所だったの?」と尋ねていただくたびに、

私は故郷の静けさを思い出します。

静けさというのは、寒くなるほど人通りが減る町中であったり、しんしんと雪が降って町を埋め、音を吸っていく光景であったり、他県の人との交流が限りなく少ない環境で暮らしているがゆえのシャイで率直な気質であったり、他県には伝わらない言葉であったり。

そんな青森の自然環境やそこに住まう人々の気質など、

青森の個性を建築で表すのであれば、

豪奢な装飾や、音がすぐ反射する狭小な空間は表現として相応しくないと私は考えます。

 

青森県立美術館への評価として

「中心地にないせいで駅からのアクセスが悪い」「建物内が広くて迷う」という2点がよく挙げられるのですが、

中心地から外れているから広大な自然とその静けさを感じることができ、

地上なのか地下なのかあいまいになるような、壕に入っていく没入体験、その静けさを感じるために必要な建物のスケール感だと考えます。

 

確かに都会やその近郊よりは新しい文化の流入がない。

しかし、そこで醸成される自然や文化はたしかにある。

それを洗練した技術で、確かな表現で伝える。

地方にいながらにして、ともすれば都心にない豊かな文化にも触れられる可能性を示してくれる建築だと思います。

不便とは言われていますが、駅からバス1本で行けます。

青森県民自慢のスポットです。

 

 

作成者:の

TEN ARCHITECTS DESIGN
TENアーキテクツの家が
ピッタリな方はこんな方
  • check

    全て納得したい。

  • check

    こだわりを実現したい。

  • check

    デザインにこだわりたい。

  • check

    他でプランをしてみたが意向が伝わらない!!

  • check

    一緒に家づくりをするパートナーを探している。

  • check

    じっくり取組みたい。

  • check

    人と同じ家はいやなんだ。

ご相談・資料請求 プラン依頼