施工レポート

2025.10.09

現場で曲げた、一本のレール

こんにちは。

今回ご紹介するのは、2年前にお引渡しをした住宅のアフター工事です。お施主様より「ベランダに蜂が入ってこないようにした

い」とのご要望をいただき、屋外用のネットカーテンを新たに設置しました。

本来、建物の計画時には想定していなかった工事のため、現場では多くの検討と工夫を要しました。

計画段階での課題

①軒天井にレール用の下地が無い

当初カーテンの設置を想定していなかったため、天井内部の構造を慎重に確認しながら取付位置を検討しました。

②天井形状が複雑

ベランダ形状と軒天井ラインが一致しておらず、かつ最大限カーテン内部を確保したい。外観を損なわないよう軒天井につける部材は最小限にしたい。

③下地の位置が不明確

軒天井には軒天のボードを固定するために、木を格子上(野縁)に組んであります。施工記録には303㎜ピッチで野縁が組まれていることが残っていましたが、現場では実測しながら慎重に位置を割り出しました。

④通風と外観の両立

虫の侵入を防ぎながらも、通風性と眺望を確保するため、ネットの目の細やかさや透過性を選定しました。

 

                        【↓本体建物施工時】                                            

 

                        【↓大工さんに相談した際の図面】

 

                        【↓手曲げレールを押し当てるための台座の図】                                                  【↓台座の様子】

 

施工時の工夫

壁から壁にカーテンレールを納めたいため、取り付け方法は大きく制約されていました。また、軒形状に沿ってレールを微妙なアー

ル形状に曲げる必要があり、大工さんと協議を重ねながら進めました。

レールは現場で手曲げ加工(こんな凄い商品があるんです!)とし、端から端まで1本通しで納まる様に調整。

施工途中に見えてくる不具合にもその都度対応できるよう、あらかじめ位置調整が可能な施工手順を組み立てました。

8月の猛暑の中での工事となりましたが、大工さん2名と息を合わせ、軒天井を傷つけないように慎重に進行。

約4時間で無事に設置を完了しました。

                      【↓完成写真】 

 

 

完成後の印象

 

屋外からの見た目もすっきりと納まり、レールの存在感を感じさせない仕上がりとなりました。ネット越しに風と光が抜け、ベランダ全体が柔らかな印象に。

お施主様からも「見た目が損なわれず快適」とのお言葉をいただき、設計・施工・住まい手でつくりあげた小さな改修工事となりました。

 

まとめ

小規模なアフター施工であっても、納まりひとつが建物の表情を左右します。今回の経験を通じて、想定外を整える設計力の大切さを改めて感じました。

 

 

二級建築士 西澤

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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