建築レポート

2026.01.06

斜陽館-北国の近代和洋建築

以前の 十和田の記事に引き続き、私の出身地・青森県の建築についてご紹介します。

今回ご紹介するのは、青森県五所川原市金木町にある斜陽館です。

太宰治の生家であり、明治時代に建てられた近代和風住宅の好例として

国の重要文化財に指定されています。

太宰の父(大地主)が建てた1階11室278坪・2階8室116坪の和洋折衷の大豪邸です。

斜陽館は赤い看板の青森銀行と向かい合っているのですが、これは偶然ではなく、

かつて太宰の父が営んでいた金木銀行が青森銀行に引き継がれたのだそうです。

 


【アクセス・ロケーション】

斜陽館までは、新青森駅から車で50分ほど、公共交通機関を使って90分ほどかかります。

ちなみに青森県では観光地のいたるところにねぶたがあります。

斜陽館がある金木町は、青森県のなかでも一番方言がきついことで有名です。

静岡県の東部・中部・西部のように青森県もエリアが3つに分かれていて、

エリアも世代も違うと言葉の30%くらいしか理解できません。

 


【斜陽館 建物内部】

高さ10mほどありそうな、広々と吹き抜けている板の間です。

梁などの構造材は青森ヒバかと思われます。

伝統的な小屋組ではなくトラス構造になっていることで、

細い材料でもしっかり瓦や雪の重みに耐えているようです。

太宰の母の居室で、子どもたちはここを勉強部屋にしていたそうです。

襖に貼られた漢詩の書、左から2番目の末に「斜陽」の熟語があるのが見どころです。

和から洋へ、このように空間が切り分けられています。

豪商の家にふさわしい豪奢な階段です。

2階廊下の上げ下げ窓も手が込んでいます。

洋間の様子です。

 

この建物は明治40年(1907年)の建築で、

大工棟梁の堀江 佐吉という人物が手掛けています。

北海道函館や札幌に出稼ぎに行った際に洋風建築を学び、

青森に帰って洋風建築を手がけたそうです。

地方でありながら先進的な洋風建築も見どころですが、

堀江 佐吉が宮大工の父から学び、息子たちへも受け継いでいった

繊細な木工技術も見どころです。

豪邸にふさわしい、細部までじっくり手をかけられた様子がわかります。

 


【雪国の中の建築】

斜陽館へは夏と冬に一度ずつ訪れたことがあるので、

降雪地帯ならではの設備や変化についてもご紹介します。

①落雪注意

訪れた時はそこまで雪が積もっていませんでしたが、

日によっては雪やつららに注意が必要です。

「いっぺ雪ふっだ後に晴れればだっきゃ、

溶けでまってやだら雪落ちてくるして気をつけせよ~」

私の地元の方言で落雪注意の説明をするならばこんな感じです。

金木の方言はまた違った言葉になるかと思います。

 

②屋根の雪止め

玄関横の、奥行がある板金屋根には雪止めがついています。

 

③植栽の冬囲い

それぞれ2階と1階から撮影しています。

〈夏〉

〈冬〉

冬になると、寒さや雪の重みによって植栽が傷むことを防ぐ必要があります。

竹や縄、むしろ(ゴザのような編み物)で囲うことが多いですが、

斜陽館では板材で頑丈に囲ってあります。

重要文化財の景観を守るために、丁寧な保護です。

 


【総括】

太宰自身はこの生家について「風情も何も無い、ただ大きいのである。」と

にべもない言葉を残しているのですが、

明治時代の職人たちの誇りが感じられる素敵な建物です。

実際に行くにはなかなか難しい立地ですが、

歴史・文学・建築に興味がある方はぜひ訪れてほしい場所です。

 

 

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