建築レポート

2026.05.06

フェスを空間として読む

先日、2年点検の補修のためにA様邸にお伺いしたところ、

「こんにちは、よろしくお願いします。……くるり好きなんですか?」

と私のくるりのパーカーにすぐに気づいて話しかけていただきました。

1年ほど着ていたのですがこの日まで誰からも言及がなく、

ようやくファンに出会えて内心小躍りでお仕事させていただきました。

富士サファリパークの西側にある富士山こどもの国では

毎年FUJI&SUNというフェスが開催されています。

私は昨年と一昨年に行っていて、

上記のパーカーもその会場で買ったものです。

 

訪れるたびに思うのは、

フェスとはただ音楽を聴くだけが目的のイベントではなく、

いきなりそこに現れた環境を楽しむイベントでもあるということです。

 

①敷地の強み

富士山が見えることもストロングポイントですが、

キャンプ用の空間が十分にあり、既設の遊具も豊富なことから、

家族で音楽・遊び・キャンプを楽しめる環境です。

FUJI&SUNではフェス会場を1から作っていくというよりは、

ステージなどの必要なスポットがこどもの国に

どう置かれていくかという視点になります。

 

https://fjsn.jp/area-map.html より

 

②配置の計画

一定規模の音楽フェスの多くがそうであるように、

FUJI&SUNもゲストの知名度や音楽性によって

ステージが3つに分けられます。

音が聞こえる方向にどんどん上っていくと

頂上にメインステージがあるような配置になっています。

 

中間地点となるMOONSTAGEでは、

奥に小高い丘がある野外空間で、

ステージの周りには飲食店が、

丘の上にはクラフトビール店が出店しています。

丘に座って飲食しながらゆったり演奏を楽しんだり、

音楽はひと休みして子どもとシャボン玉を飛ばしてみたり……。

音楽が主体ではあるものの、自分のペースで楽しめる空間になっています。

一方でメインステージのSUNSTAGEは、

平坦で広々としていて、

ステージ前にはたくさん人が集まれるスペースを確保しながら

両サイドに飲食店や雑貨類のショップが並んでいます。

ステージの反対側には、

飯盒炊飯や体操などのアクティビティが行われるスペースがあり、

メインの空間に幅を持たせてより人が集まる空間になるよう誘導しています。

 

③動線の計画

3つのステージがほどよく離れていて高低差があるので、

・森の中の道を進んでいくごとに違う音楽・違うお店が見えてきて、

自分で開拓する感覚を味わう

・森の奥に進んでいく非日常感・没入感を味わう

・道が限られているので、人の流れに乗っていく一体感を味わう

といったように、森の中の公園ならではの魅力を生かした

動線計画となっているように思います。

例えば住宅でも、廊下をただ移動するだけの空間にするのではなく、

ギャラリーや壁面収納、ワークスペースなどの付加価値をつけることができます。

 

音楽が主役のイベントではありますが、

FUJI&SUNは特に、自然との一体感を大切にするフェスとなっています。

好きなアーティストの演奏が見られた!という思い出だけではなく、

芝生の丘の上でおいしいご飯を食べて、友人と談笑しながら音楽を楽しんだこと

ずっと肌寒いなか焚火にあたってじんわり温まったこと

小雨が降って木や土の香りが濃く立ち上がっていたこと

終演後に、心細くなるような濃い霧の中を大勢の人と連れだって下りて行ったこと

こういった肌で感じたことのほうがむしろ強く記憶に残っている気がします。

 

フェス会場自体はあくまで仮設の空間なのですが、

敷地を読んで環境を作り、体験を生み出すという操作は建築と通じるものがあります。

仮設ならではの制限はあると感じましたが、

それがFUJI&SUNの場合は自然と一体化するという意味のある引き算になっているように感じました。

 

今年もできれば行きたかったのですが、

昨年のくるりの名曲揃いのセットリストに大満足したのもあり、

今年はあきらめようかと思っています😢

でも演奏されるであろう新曲の「ワンダリング」、

ライブ映えするはずなのでとても見たい……!

年々アーティストも豪華になっているし……!と葛藤しております。

 

これから本格的に夏フェスが増えていきますので、

会場のエリア計画や、そこでしか味わえない空気もぜひ注目してみてください。

 

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