建築レポート

2025.11.02

雨を風景に変える大屋根 ー VISONにみる建築環境 ー

地元・三重県の多気町にある商業施設「VISON(ヴィソン)」に行ってきました。

VISONは、食・文化・アートが集まる大型複合施設で、地元に帰るたびによく立ち寄るお気に入りの場所です。

その中でもひときわ印象的なのが、施設の中心にある「マルシェ ヴィソン」。

建築的にも見どころが多く、訪れるたびに発見があります。

目を引く大屋根と木の構造美

敷地に入ると、真っ先に目に入るのが大きく張り出した屋根。

この大屋根は集成材による梁と柱で支えられており、

木のぬくもりと構造のリズムが美しく調和しています。

梁のスパンの取り方や勾配のラインがとても伸びやかで、

広大な敷地と周囲の自然のスケールに負けない存在感。

近くで見ると、構造体の接合金物も最小限に抑えられていて、

木そのものの質感が引き立っています。

風と光を取り込む開放的な空間

大屋根の下には壁がほとんどなく、ルーバーと柱・梁だけで構成された開放的な空間。

棟の部分から自然光が差し込み、時間帯によって光の入り方が変化します。

風通しも良く、暑い日でも木陰のような涼しさが感じられる心地よい場所です。

ルーバーの向こうには高速道路が通っており、

外部からの視線や音を柔らかく遮る“木のフィルター”として機能しています。

雨を風景に変える設計

この建物で特に印象的だったのは、軒のデザインです。

軒は非常に深く取られ、外のベンチやBBQスペースと一体的につながっています。

軒先はシャープに見せるために内部で段差を設けており、

厚みを感じさせない軽やかなラインになっています。

さらに、軒先にあえて樋を設けず、雨がそのまま自然に落ちるよう設計されています。

降る雨がリズミカルに地面を打ち、風景の一部として楽しめるようになっているのです。

「雨を嫌うのではなく、景色として受け入れる」——そんな日本的な感性を感じました。

水の行方までデザインされている

建物の下り側には、直径約1.5mの大きなスチールドラムが設けられ、

屋根から落ちた雨水がここに集まるようになっています。

マルシェ内の水がこの一点に導かれるように計画されており、

“水の循環”を視覚化したデザインになっています。

コンクリートの処理や排水経路もきれいに整えられていて、

単なる雨水処理ではなく「環境を感じる装置」として成立しているのが印象的でした。

 

自然と共にある建築

マルシェヴィソンは、単なる商業施設ではなく、

自然・素材・人の活動が一体になった建築だと感じます。

構造の力強さと、光や風、雨といった自然現象を取り込む繊細さ。

訪れるたびに、建築が環境とどう関わるかを考えさせられる場所です。

 

一級建築士 鎌形

TEN ARCHITECTS DESIGN
TENアーキテクツの家が
ピッタリな方はこんな方
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    全て納得したい。

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    こだわりを実現したい。

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    一緒に家づくりをするパートナーを探している。

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    じっくり取組みたい。

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    人と同じ家はいやなんだ。

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